投資対象にはリターンだけでなく標準偏差があることを忘れないように
(出典)GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)「2024年度業務概況書」
GPIFの2024年度業務概況書より
各資産の標準偏差と相関係数については、バブル崩壊後の1994年4月から2024年3月の30年間の月次リターンを用いて推計を行いました。月次リターンは開始日によってブレがあるため、開始日を各月1日~30日と様々に変えた場合のリスク・相関係数を算出し、これらを平均しました。
こちら(上表)は私たちの公的年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)にある「2024年度業務概況書」からのものです。
是非リターンとリスクの部分を参照されてください。
資産配分を考慮するにあたって、投資対象に対して過去のある期間について期待リターンと想定リスクを測定し設定しますが、その範囲を「1994年4月~2024年3月」という長期にしており、世界的に相場環境の良かった10数年またはここ数年にしていないところは好感持てます。
期待リターンは過去の単純平均、想定リスクはその標準偏差です。
そこに相関係数を用いて「資産分散」をして期待リターンと想定リスクを設定します。
そもそもこれ自体を理解していないセルサイドやYouTuberが多いと思います。
相変わらず上表にある【リスク(標準偏差)】というものを全く考慮していない話が蔓延しています。
金融業界の情報の非対称性については呆れるばかりです。
金融庁が率先してそれを説明しようとしていないのが要因のひとつでしょう。
金融庁は投資のリスクを軽視しすぎていると思います。
このGPIFの資料にある「過去30年を投影ケース」を参考に以下シミュレーションしていきたいと思います。
積立投資の30年後の元本割れ確率3割?
ここで積立投資のモンテカルロシミュレーションをみてみましょう。(当ページの一番上のグラフ)
GPIFの資料から海外株式の期待リターン(4.01%)と想定リスク(20.35%)を使って行います。
30年の積立投資を1万回シミュレーションした場合、期待リターン(3432万円)以上になる確率は約35%、それ以下になる確率は約65%、元本割れの確率も28%ほどあります。
最頻値はほぼ元本水準です。
リスク(標準偏差)が高いとそうなります。
期待リターンの3432万円は、毎年4.01%の固定金利を複利運用した結果です。所謂お花畑シミュレーションです。
日本の金融業界は金融庁含めてこのシミュレーションで顧客に対して投資をすすめています。
これが正しいのであれば、特に保険業界が一定利益を得たあとに高い固定金利で貯蓄性商品を販売、金融庁は積極的に認可すればいいだけです。
とても残念なことですが、投資において常識レベルとして、期待リターン以上、それ以下になることをリスク(標準偏差)といいますが、この毎年●%の複利運用を投資結果として説明している面々はそういうことを一切想定していません。
いえ、理解していません。
あらゆる金融にまつわる法令遵守という立場の者が行っていい仕事レベルとは思えません。
注意喚起
注意喚起します。
新NISAやiDeCoをやっていくにあたり、この毎年●%の複利運用シミュレーションを前提とする限り、「住宅ローン返済計画」や「ライフプラン作成」はほとんど意味がなくるでしょう。
なぜなら、よくある積立投資の●%の複利運用の「●%(金利)」は、住宅ローン金利や奨学金の金利などと比較してはじめから高く、ローン残高は減少していく仕組みで、逆に資産運用は増加し、残高に対して固定金利で複利運用していくので圧倒的に乖離していきます。
結果、ほぼ将来の家計破綻は起こらなくなります。
投資をすればバラ色の未来がやってくるという話です。
あまりに投資のリスクを想定しないことは、人生のリスクが大きすぎる行為です。
例えば、
住宅ローン展示場等でFP相談を行った際、
マネーセミナーに参加して個別相談に行った際、
新NISAやiDeCo(変額保険もそれに入れてくるFPもいます)で今回のような「固定金利●%で複利運用」シミュレーションを行って、「住宅ローン大丈夫です!」「老後安心です!」とか言われて、あなた自身が少し違和感を感じている方は、次のことをその相手に質問してみてください。
「投資の標準偏差はどう考えていますか?」


